2014 年 36 巻 1 号 p. 34-37
要旨:症例は39 歳男性,左側頭葉の脳動静脈奇形に対する開頭摘出術および放射線治療の既往があった.右上肢の軽微な痺れを主訴に当院を受診,精査にて左側頭葉の囊胞性病変を指摘された.血管造影では残存ナイダスは認めず,放射線治療後の遅発性囊胞形成と診断した.経過観察中の1 年後に言語障害が出現し,囊胞拡大と圧迫所見を認めたため顕微鏡下囊胞壁開窓および囊胞-腹腔シャント術を行った.術後症状改善と囊胞の縮小がみられたが,1 年後に再び症状増悪と囊胞増大がみられたため再手術を行った.再手術から4 年を経過しているが,症状は改善し,囊胞の増大もなく順調に経過している.脳動静脈奇形に対する放射線治療から14 年後に症候性となった多房性囊胞の1 例を経験した.今回我々は囊胞開窓に囊胞-腹腔シャント術を組み合わせることで良好な結果を得ることができた.その特徴や治療法について文献的考察を加え報告した.