2014 年 36 巻 1 号 p. 42-46
要旨:症例は78 歳男性.突然の左上下肢の不随意運動,構音障害が発症した.頭部MRI では異常なく,ハロペリドールを処方されたが,症状が改善しないため,第4 病日に当科に入院した.入院時は,構音障害,左上下肢にchorea,ballism 様の不随意運動,軽度の左不全片麻痺を認めた.頭部MRI拡散強調画像では右基底核,島皮質に高信号域を認め,頸部MRA や頸動脈エコーでは右内頸動脈起始部に高度狭窄を認めた.脳血流SPECT,perfusion CT では右中大脳動脈皮質領域の血流低下に加えて右基底核部での灌流異常を後者で明示され,不随意運動は右内頸動脈狭窄に伴うlimb shaking(LS)と診断した.第15 病日に頸動脈血栓内膜剝離術を施行し,術後,血流障害と症状の改善を認めた.内頸動脈狭窄に伴うLS の原因に,頭蓋内皮質-基底核間の血流較差以外に,基底核部自体の灌流異常が関与していることが考えられた.