抄録
要旨:症例は83 歳男性.短期間に進行した認知機能低下により自宅生活が困難となったため受診となった.頭部MRI 検査にて両側視床にT2 強調画像,FLAIR 画像にて高信号域を,T2* 強調画像で出血性変化を疑う低信号域を特に右側に認め,認知機能低下の原因であることが示唆された.MRA 検査にてMRI 信号変化に関係すると考え得る異常血管の描出を認めたため選択的脳血管撮影を施行した.結果,直静脈洞閉塞を伴う硬膜動静脈瘻を認め,内大脳静脈領域への逆流,鬱血を来していた.この鬱血が視床機能に影響し,認知機能低下を来すに至ったと診断された.血管内治療にて逆流するシャント血流を遮断することで症状は改善し自宅生活が可能となった.今回,視床病変に由来する認知機能低下の原因として静脈洞閉塞を伴う硬膜動静脈瘻の稀な症例を経験したので報告する.