脳卒中
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症例報告
中大脳動脈塞栓症に対するt-PA 静脈注射中に反対側中大脳動脈に発生した脳塞栓症の1 例
花川 一郎田中 健太郎長島 良堤 恭介松本 隆洋柳橋 万隆中村 安伸村尾 昌彦井手 隆文
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2017 年 39 巻 6 号 p. 441-445

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抄録

症例は82 歳の女性.左片麻痺を認め,救急車で搬送受診.頭部CT にて明らかな異常はなく,心電図にて心房細動は認めなかった.NIHSS は18 点.頭部MRI にて,右大脳基底核に梗塞を認めた.MRA にて右中大脳動脈閉塞を認め,発症後3 時間30 分にt-PA 静脈注射を施行.t-PA 投与15 分後に左上下肢麻痺は改善したが,開始後55 分に完全失語,右片麻痺が出現した.MRA にて左中大脳動脈閉塞を認めたため,血管内手術を施行.血栓吸引し,再開通が得られた.CT にて脳出血の合併はなく,右上下肢麻痺も改善を認めた.心エコーにて明らかな心臓内血栓を認めなかったが,心電図にて心房細動を認めた.稀に,t-PA 静脈注射後に新たな脳梗塞が発生することが報告されており,いずれも予後不良である.特に心房細動を伴う患者のt-PA 静脈注射の際には脳塞栓再発の可能性も念頭におき,血管内治療の準備をしておくべきであると思われた.

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© 2017 日本脳卒中学会
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