脳卒中
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39 巻, 6 号
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原著
  • 田村 智, 安藤 和弘, 源甲斐 信行, 柿沼 健一
    2017 年 39 巻 6 号 p. 425-432
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー

    【目的】3.0T-MRI が24 時間頻繁撮像可能な当院で,tPA 投与下の急性期脳梗塞MRI 所見のダイナミックな変化を報告する.【方法】tPA 治療をした急性期脳梗塞62 例で,tPA 投与前,投与中,投与後とMRI を行い,早期再開通,DWI 病巣,臨床所見の変化について検討した.【結果】早期再開通群は19 例(24%),DWI 病巣の縮小は6 例(10%)で認めた.早期再開通群の63%でtPA 投与中にTICI 2B 以上を得ていた.早期再開通がDWI 病巣の縮小,劇的な症状改善,良好な予後と関連していた.早期再開通群においてDWI 縮小群は非縮小群に比べてNIHSS が高値でASPECTS+Wが低値であった.縮小したDWI 病巣が慢性期で画像変化を生じる例もあった.【結論】tPA 投与開始後30 分から再開通やDWI 病巣の縮小を認める.早期再開通は症状と予後を改善し,重症例の比較的広い梗塞範囲のDWI 病巣も縮小しうる.

  • 大内 東香, 原 賢寿, 柴野 健, 石黒 英明
    2016 年 39 巻 6 号 p. 433-440
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー

    【背景および目的】脳卒中における偽痛風の合併頻度と臨床的特徴を明らかにする.【方法】脳卒中患者391 例と同時期に入院した非脳卒中患者597 例を対象に両群間の偽痛風合併頻度と偽痛風臨床所見を比較した.【結果】偽痛風合併は脳卒中群で非脳卒中群より高い傾向を認め(3.3% vs 1.5%,p=0.08),McCarty の偽痛風診断基準definite,probable 例に限ると脳卒中群で有意に偽痛風発症率が高かった(1.8% vs 0.3%,p=0.03).脳卒中群の偽痛風13 例は全例が低自立度の時期に発症し,麻痺側に生じたもの4 例,麻痺側と非麻痺側の両側発症1 例,非麻痺側に生じたもの8 例であった.13 例中8 例で偽痛風診断前に抗菌薬が使用されていた.【結論】脳卒中急性期では偽痛風発症率が高く,偽痛風は非麻痺側にも生じうる.脳卒中急性期患者の発熱をみた場合,偽痛風も念頭に置く必要がある.

症例報告
  • 花川 一郎, 田中 健太郎, 長島 良, 堤 恭介, 松本 隆洋, 柳橋 万隆, 中村 安伸, 村尾 昌彦, 井手 隆文
    2017 年 39 巻 6 号 p. 441-445
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー

    症例は82 歳の女性.左片麻痺を認め,救急車で搬送受診.頭部CT にて明らかな異常はなく,心電図にて心房細動は認めなかった.NIHSS は18 点.頭部MRI にて,右大脳基底核に梗塞を認めた.MRA にて右中大脳動脈閉塞を認め,発症後3 時間30 分にt-PA 静脈注射を施行.t-PA 投与15 分後に左上下肢麻痺は改善したが,開始後55 分に完全失語,右片麻痺が出現した.MRA にて左中大脳動脈閉塞を認めたため,血管内手術を施行.血栓吸引し,再開通が得られた.CT にて脳出血の合併はなく,右上下肢麻痺も改善を認めた.心エコーにて明らかな心臓内血栓を認めなかったが,心電図にて心房細動を認めた.稀に,t-PA 静脈注射後に新たな脳梗塞が発生することが報告されており,いずれも予後不良である.特に心房細動を伴う患者のt-PA 静脈注射の際には脳塞栓再発の可能性も念頭におき,血管内治療の準備をしておくべきであると思われた.

  • 新井 鐘一, 熊井 康敬, 宇都宮 英綱
    2017 年 39 巻 6 号 p. 446-450
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー

    症例は84 歳男性.感覚性失語様の軽度の見当識障害で発症.発症日の頭部MRI では左視床枕,海馬に拡散強調画像で淡い高信号域を認め,急性期脳梗塞が疑われた.発症2 病日のMRI では病変は左扁桃体から鉤,島皮質,前頭葉底部へと拡大し,ADC-map では淡い高信号域から低信号域,FLAIR では明瞭な高信号域を呈していた.発症3 病日の灌流画像(ASL)では左側頭葉の血流増大を認め,頭部MRA では左MCA の末梢枝は拡張していた.病変の局在から原因として辺縁系脳炎が鑑別に挙げられたが,髄液や特殊血清検査では明らかな異常所見は指摘されなかった.その後,発症16 病日のMRI では浮腫性病変は縮小していた.本例の病変は細胞性浮腫と血管性浮腫の混在した浮腫性病変であり,その機序としてMRI の推移とASL の所見から過灌流が大きく関与していると考えられた.

  • 藤本 健二, 大塚 忠弘, 篠島 直樹, 矢野 茂敏
    2017 年 39 巻 6 号 p. 451-455
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

    症例は49 歳女性.頭痛後の不穏状態にて救急搬送された.来院時所見は,JCS 3-R,頻脈,頻呼吸,発熱,異常発汗,また眼球突出,甲状腺腫大を認めた.CT にてくも膜下出血,採血所見にてFT3・FT4 の高値とTSH の低値を認め,甲状腺クリーゼを合併したくも膜下出血と診断した.甲状腺クリーゼの治療をまず優先して行い,クリーゼ改善後に手術を行い,転帰は良好であった.甲状腺クリーゼは適切な治療を行われなければ生命予後は極めて不良である.症状はくも膜下出血と共通するものも多く,合併した場合の診断は容易ではない.今回,身体所見からBasedow 病を疑い諸検査で甲状腺クリーゼの診断に至ることができたが,もし甲状腺クリーゼを見落とし,くも膜下出血急性期に手術を行っていれば,クリーゼ増悪による致死的転帰をたどった可能性があった.甲状腺クリーゼの治療を最優先させ,待機手術としたことが功を奏したと考えられる.

  • 庄田 健二, 野中 裕康, 加藤 雅康, 竹中 勝信
    2017 年 39 巻 6 号 p. 456-459
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー

    Non-Vitamin K antagonist oral anticoagulants (NOACs)はワルファリンと比較して,塞栓性脳梗塞の予防において同等の抗凝固作用を有しながら,出血性合併症が少ないとされ,広く普及してきている.しかし出血性合併症に関しての対処は明確に定められていない.今回我々はダビガトラン内服後早期に新鮮凍結血漿(frozen fresh plasma: FFP)を投与して開頭血腫除去術を行った1 例を経験した.【症例】87 歳,女性.頭部打撲にて当院救急搬送された.受傷6 時間前にダビガトラン110 mgを内服しており,頭部CT で左急性硬膜下血腫を認めたが,外傷による意識障害,神経症状はなかったことから経過観察とした.しかし受傷3 時間後に意識レベルの低下を認め,頭部CT にて血腫が増大していたことから,FFP を投与しつつ開頭血腫除去術を施行した.手術中の出血傾向はなく,術後経過は良好であった.

第41回日本脳卒中学会講演
シンポジウム
総説
  • 八尾 博史
    2017 年 39 巻 6 号 p. 460-464
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー

    健常高齢者の潜在性脳虚血病変によって引き起こされる認知機能障害について概説した.潜在性脳梗塞と慢性腎臓病は遂行機能障害と関連があり,これは血管性認知障害(vascular cognitive impairment)としてとらえることができる.さらに,深部白質病変と短い教育歴がアパシーと相関し,アパシーは余暇の身体活動度と相関があった.低い身体活動度は認知症の危険因子であることが報告されており,我々の検討でも身体活動度低下とアルツハイマー病のバイオマーカーである海馬萎縮,記憶力低下に有意な関連があった.以上の結果から,高血圧など血管危険因子により潜在性脳病変と遂行機能障害を特徴とする血管性認知障害が引き起こされ,さらにvascular depression としてのアパシーは身体活動度の低下を介して,アルツハイマー病への過程を促進させる可能性があるのではないかという仮説を提唱した.

  • ─スタチンとEPA の安定化の類似点・相違点─
    澤田 元史, 八十川 雄図, 水谷 大佑
    2017 年 39 巻 6 号 p. 465-469
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/01/19
    ジャーナル フリー
    スタチンが冠動脈や頸動脈のプラーク安定化をもたらすことは明らかではあるものの,ス タチンが導入されていても心・脳血管イベントの発症リスクは残存している.EPA などのn-3 系不 飽和脂肪酸が冠動脈イベントを抑制することは報告されているが,頸動脈病変での有用性は不明で ある.本研究では,スタチン治療を受けLDL-C が制御されている頸動脈狭窄患者のプラークの特徴 を解析したところ,EPA/AA‹0.4 と低く,MR プラーク診断で粥腫内出血が優位であった.また, 1,800 mg/日の45 日間(中央値)のEPA 製剤内服によりEPA/AA が上昇することで粥腫内出血が優位に 安定化した一方,我々が以前報告したように(脳卒中の外科41: 39–45, 2013),EPA とスタチン併用内 服では粥腫内出血と脂質豊富な粥腫の両者が安定化することから,EPA とスタチンでは頸動脈プ ラークに対する安定化の機序が異なる可能性が示唆される.
  • 片野 雄大, 神澤 孝夫, 美原 盤, 木村 和美
    2017 年 39 巻 6 号 p. 470-475
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

    脳梗塞の約20~25%は原因不明の脳梗塞(潜因性脳卒中:cryptogenic stroke)に分類されるが,その多くは塞栓性脳梗塞と考えられる.近年,embolic stroke of undetermined source(ESUS)は潜因性脳卒中のなかの塞栓源不明の脳塞栓症として提唱された.その頻度は脳梗塞全体の15~20%とされる.主な塞栓源として考えられる病態には低リスクの心内塞栓源,潜在性発作性心房細動,潜在性悪性腫瘍,動脈原性塞栓,奇異性塞栓症などが想定されている.しかし,branch atheromatous disease(BAD)やWallenberg 症候群などもESUS に含まれるとする解釈もあり,その解釈に関しては,さまざまな見解があるのが現状である.またESUS に対する抗血栓療法については確立したエビデンスが存在しておらず,現在大規模臨床試験が進行中であり,その結果が待たれる.

  • 高橋 若生
    2017 年 39 巻 6 号 p. 476-479
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/02/16
    ジャーナル フリー

    感染性心内膜炎(infective endocarditis: IE)は多彩な合併症を伴うが,脳血管障害は代表的な合併症である.虚血性脳卒中はIE における神経合併症の半数以上を占め,出血性脳卒中は6~18%に相当する.IE に伴った脳卒中はIE の病初期に発症することが多く,しばしばIE の初発症状となる.脳梗塞の大半は皮質枝領域に認められ,脳内出血は皮質下の多発性の血腫として認められる.また,神経症候を有さない症例においても,無症候性脳梗塞やmicrobleeds を含む無症候性出血性病変を伴うことが少なくない.IE に伴った脳卒中は,Staphylococcus aureus を起炎菌としたIE で発症頻度が高く,心エコーで検出される疣贅のサイズが発症リスクと関連する.

  • 中瀬 泰然, 師井 淳太, 石川 達哉
    2017 年 39 巻 6 号 p. 480-484
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/24
    [早期公開] 公開日: 2017/02/07
    ジャーナル フリー

    脳塞栓症の最大の原因として心房細動が挙げられる.しかし,諸検査で心房細動を認めず動脈硬化巣を含めて塞栓源不明のままである脳塞栓症にもしばしば遭遇する.近年,この塞栓源不明の脳塞栓症(ESUS)がその病態を含めて注目されてきている.本研究では,急性期脳梗塞で入院し抗凝固薬投与が開始された患者について,心房細動を認め心原性脳塞栓症と診断できた症例と塞栓原不明のままであった症例に分けて,予後に差異を認めるか検討した.その結果,心原性脳塞栓症の方が塞栓源不明の脳塞栓症に比して有意に重症で,退院時ADL が不良の傾向であった.また1 年の追跡による累積脳梗塞再発率は2 群間でほぼ同等であったが,全死亡まで含めた予後は心原性脳塞栓症の方が不良であった.抗凝固薬による脳塞栓再発予防に心房細動の有無は影響しないが,長期予後は心原性脳塞栓症で不良となることが示唆された.

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