抄録
高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて砂ネズミの脳組織内S-adenosyl-L-methionine (SAM) とその代謝関連物質であるS-adenosy1-L-homocysteine (SAH), adenosineおよびATP, ADP, AMPを測定し, 脳虚血におけるこれらの変動と脳内エネルギー代謝におよぼす影響について検討を加えた.その結果, 1) 砂ネズミの正常脳組織内SAM含有量は85±4.2 (SEM) nmol/g乾燥重量であった.2) FO-1561 (SAM250mg, mannitol 300mg/kg) の腹腔内投与により脳組織内SAM含有量は有意に増加し, 投与30分後に107±8.1nmol/g乾燥重量となった (p<0.05).3) 脳組織内SAM含有量は10分間の両側総頚動脈結紮による脳虚血で有意に減少した (P<0.05).しかもSAM投与後の脳虚血群でその減少が著明であった.4) 脳虚血時のATPの減少はFO-1561投与, 非投与両群間に差を認めなかったが, ADPとenergychargeの低下はFO-1561投与群で有意に抑制された.