抄録
塞栓によると思われるlocked-in症候群の1例を報告する.症例は心房細動を有する62歳男性で, 突然に10cked-in症候群を呈して入院した.入院時のCTおよびMRIにて橋底部, 右小脳半球に梗塞巣を認めたが, 第9病日の脳血管撮影では椎骨脳底動脈の壁不整像を除いて閉塞・狭窄像はみられなかった.肺炎・呼吸不全にて第179病日に死亡, 剖検所見は次の如くであった.すなわち, 1)脳底動脈の中等度のアテローム硬化は右上小脳動脈, 左前下小脳動脈に広がっていた.2) CT, MRI同様, 橋底部, 右被蓋, 右小脳半球に一部出血を伴う軟化巣がみられた.3) 左心耳には血栓を認めなかったが, 脾に小梗塞がみられた.これらの所見は, 脳底動脈吻側部に存在したアテローム硬化性病変に栓子がlodgeし, 再開通にもかかわらず, 脳幹梗塞をきたしたものと考えられた.