抄録
閉塞脳血管に対するUrokinase・heparin併用療法の線溶作用を評価するため, 発症3日以内の中大脳動脈閉塞症111例を対象に出血性梗塞, 再開通現象, 再発の出現率を無作為に分けたUK・heparin投与例62例 (UK-H群) と非投与例49例 (C群) で比較検討した.
(1) 出血性梗塞の出現率はC群25%に対し, UK-H群23% (UK-H大量群30%, UK-H少量群16%) と差はなく, 発現日の差も認めなかった. (2) 追跡脳血管写を施行した55例の再開率はC群6/16 (38%) に対し, UK-H群15/39 (38%) (UK-H大量群33%, UK・H少量群44%) と差を認めなかった.逆に脳塞栓21例の閉塞進展例がcontrol群1/8 (13%) に対し, UK-H群5/13 (38%) とくにUKH少量群4/5 (80%) に多い傾向を認めた (p=0.03). (3) 発症2W以内の再発率はC群2%に対し, UK-H群10%とUK-Hに高い傾向を認めた (p=0.103).脳塞栓38例の発症2W以内の再発率はC群1/18 (6%) に対し, UK-H群5/20 (25%) とUK-H群に高く (p=0.115), とくにUKH少量群は4/12 (33%) と高い再発率を示した (p=0.068).以上より, UK・heparin併用投与は自然経過を越えた出血性梗塞, 再開通現象の発現とは無関係であり, 逆に脳塞栓早期再発を誘発する危険性が示唆された.