脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
脳梗塞症例における赤血球凝集能の亢進
穿通枝梗塞と皮質枝梗塞の比較
吉利 味江子篠原 幸人
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 12 巻 2 号 p. 139-147

詳細
抄録

脳梗塞64例を対象として赤血球凝集形成速度 (RBC-A・T1/2) を自家製RBC-aggregometerで測定し, 穿通枝梗塞と皮質枝梗塞とに分けてその結果を比較した.症例の内訳は穿通枝梗塞34例, 皮質枝梗塞30例で, 年齢をマッチさせた対照群は67例である.RBC-A・T1/2はそれぞれ4.8±1.0秒 (n=34), 5.3±1.7秒 (n=30), 6.4±2.0秒 (n=67) で, 穿通枝梗塞, 皮質枝梗塞共に対照群に比しRBC-A・T1/2の推計学的に有意 (P<0.01) な亢進を認め, 穿通枝梗塞では皮質枝梗塞に比し推計学的に有意ではないが赤血球凝集能がより亢進する傾向を認めた.またRBC-A・T1/2の値と発症後の期間および梗塞巣の大きさには有意な関係はみられなかった.赤血球凝集能の亢進は, 発症前から存在する赤血球自身の性質にも依存すると考えられ, 特に脳梗塞病巣付近を中心とした血流低下部位ではこの凝集能亢進が血流低下を更に増長するばかりでなく, 脳梗塞発症の一因ともなる可能性が考えられた.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本脳卒中学会
前の記事 次の記事
feedback
Top