1991 年 13 巻 5 号 p. 333-340
高血圧自然発症ラットを用い, カルシウム拮抗薬 (ニルバジピン) の脳虚血時の脳代謝に及ぼす効果を検討した.
1時間前にニルバジピンを経口投与し, 両側総頚動脈結紮による脳虚血作製後1時間あるいは3時間で脳を急速凍結し, 脳代謝産物を測定した.脳虚血1時間後のテント上大脳組織のATPは, 対照群の0.61±0.07mmol/kgに比べ, ニルバジピン0.5mg/kg投与群では1.09±0.16mmol/kgと有意に高く, ピルビン酸も対照群の0.12±0.02mmol/kgに比べ, 治療群では0.21±0.02mmol/kgと有意に高値であった.但し, 乳酸値には差はみられなかった.また, 脳虚血3時間後でも, ATPおよびピルビン酸値は治療群で高い値を示した.さらに脳虚血作製直後にニルバジピン0.5mg/kgを投与した群でも, 1時間後のATPは1.40±0.14mmol/kg, ピルビン酸は0.27±0.04mmol/kgと対照群に比し有意に高かった.一方, 脳血流の変化はニルバジピン0.1~0.5mg/kgの投与で, 脳虚血前後で対照群との間に差はみられなかった.ニルバジピンは脳血流改善以外の作用により, 脳虚血時の脳代謝障害を抑制すると思われる.