脳卒中
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“Alien hand sign”, 鏡像書字を呈した右前大脳動脈領域梗塞の1例
高松 和弘滝沢 貴昭佐藤 昇樹佐能 昭宮本 勉
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1993 年 15 巻 4 号 p. 317-322

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抄録
我々は右前大脳動脈領域の梗塞で左手にalien hand signと鏡像書字を塁した70歳・女性を報告した.神経学的所見では意識は清明だが抑うつ傾向, 寡黙であった.脳神経領域に異常所見は認められなかった.下肢優位の左不全片麻痺を認めた.左上肢は本人の意志に反して無目的に勝手に動いた.深部腱反射は左上下肢で亢進, 左側でBabinski反射が陽性, 左手に軽い把握反射を認めた.感覚系・小脳系に異常はなかった.神経心理学的所見 : 1) 言語機能;自発言語は非常に少なかったが失語は認めなかった.2) 書字機能;右手の書字は異常は認めず, 左手の書字は自発書字および書き取りは鏡像となった.3) 失行・失認は認められなかった.神経放射線学的所見;頭部MRIで前頭葉底部から補足運動野, 帯状回, 膨大部を除く脳梁全体に及ぶ広汎な梗塞巣を認めた.本例での左上肢の異常行為は, “道具の強迫的使用” や “拮抗性失行” などの他の異常行為とは異なり, “alien hand sign” の定義に一致すると思われた.
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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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