抄録
重要な血管拡張作用を持つNitricoxide (NO) は, はじめ血管内皮細胞由来血管拡張因子として同定されたが, 脳血流への関与以外に細胞間情報伝達にも大きく関与していることが理解されてきた.一方, NO自体はフリーラジカルとしては, それほどtoxicであったり反応性が強いわけではなく, むしろsuperoxideとNOが急速に反応しさらに毒性の強い分子種であるperoxynitriteを形成することが重要で, これがsuperoxide disrnutase (SOD) により触媒されて, 蛋白のチロシン残基のニトロ化を生じ, 細胞変性を促進することが想定された.実際, 脳虚血時に組織NO濃度が上昇し, 細胞蛋白のニトロ化が増加していることが確かめられた.またこの現象により, 近年遺伝子変異が見つかった筋萎縮性側索硬化症におけるSODの機能を説明できるかも知れない.