抄録
本基礎研究は,高血糖時の脳虚血・再灌流負荷に対する脳内NO産生動態の解明を目的とした.雄性Wistarラットを対象に,高血糖群と対照群をそれぞれ7匹用いた.大腿動静脈にカテーテルを挿入し,血圧測定とglucose注入に用いた.一側線条体と海馬に微小透析プローブを刺入し,in vivo microdialysisを行った.脳虚血はSmithの方法に従い,前脳虚血を20分間施行した後,再灌流・血液再注入を行った.実験終了後,灌流液中のNO2-とNO3-濃度をGriess反応で測定し比較した.1.基礎NO産生:高血糖群のtotal NO(NO2-+NO3-)は対照群に比し線条体・海馬ともに高値を示した.II.虚血後NO産生:線条体における虚血10,20分後のtotal NOは高血糖群では対照群に比し高値であった.再灌流10分のNO3一は高血糖群では対照群に比し高値であった.以上より,高血糖負荷時の虚血・再灌流における線条体のNO産生増加は,高血糖による細胞傷害の一つの要因であると考えた.