抄録
目的:悪性腫瘍に伴う脳梗塞の臨床的特徴と凝血学的分子マーカーの有用性について検討した.対象と方法:過去5年間に当院に入院した脳梗塞患者で悪性腫瘍を有した74例(平均71±11才,男53人,女21人)を対象とし,臨床的特徴について検討した.結果:45例(60.8%)が塞栓性,29例(39.2%)が血栓性であった.原発臓器は胃癌が最多で(23%),組織型は腺癌が最多だった(60.8%).対照群と比べ,発症時のD-dimer値が有意に高値だった(D-dimer;9.6±18.7μg/ml vs3.9±6.8μg/ml,p<0.05).また血清CA19-9値とD-dimer値との間に相関関係がみられた(CA19-9vs D-dimer R=0.37,p<0.05).結論:担癌患者では凝固線溶系の著しい活性化が脳梗塞発症に関与し,担癌患者においてはD-dimer値の上昇が脳梗塞発症の予測マーカーとして有用である可能性が示唆された.