脳卒中
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くも膜下出血早期CT像と予後
野中 信仁三浦 義一松角 康彦藤岡 正導桜間 信義
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1981 年 3 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

くも膜下出血のCT所見は, それぞれの髄液槽に認められるhigh densityの広がりとして把えられるが, 同時に脳内血腫や脳室内穿破も, 従来の脳血管撮影所見と比較して極めて正確に立体的把握を可能とした.くも膜下出血発症早期のCT所見の差異が, さらに予後の判定と治療方針の選択に資するものであるならば, くも膜下出血の治療にとりCT診断が一層的確有効となることは疑いない.早期CT所見と予後との相関を知る目的のもとに, 102例のくも膜下出血症例のうち4日以内のCT所見を分析した.くも膜下出血早期CT像の多くは, 両側シルビウス裂溝ならびに前大脳縦裂が, くも膜下凝血により満たされるか, くも膜下腔の閉塞を示すことが特徴であるが, しばしば, 脳底槽, 迂回槽, 四丘体槽までも, くも膜下凝血が満たす時, 早期死亡あるいは脳血管攣縮の発生など不良な経過をたどる可能性が強い.また脳室内出血, 脳内血腫を伴う場合は, 特に予後を不良とする可能性が極めて高く早期手術の適応が大きいことが判った.
1) くも膜下出血の急性期 (発症後4日以内) に施行することができた73症例の早期CT像を分析し, くも膜下出血患者の予後との相関を検討した.
2) くも膜下腔の状態を, CT所見より, 凝血, 消失, 開存と分類した場合, 良好な経過を示した群では, 両側シルビウス裂溝ならびに前大脳縦裂のみが, 凝血, 消失の所見を示すのが特徴であるが, 早期死亡あるいは, 脳血管攣縮の発生という経過をたどった群では, 脳底槽, 迂回槽, 四丘体槽までも, 凝血の所見を示す症例が極めて高い頻度でみられた.
3) 脳室内出血の有無については, 良好な経過を示した群ならびに脳血管攣縮の発生という経過をたどった群では, 両側側脳室, 第3脳室, 第4脳室いずれも0~3.6%の頻度を示したが, 早期死亡群では, 33.3~46.7%と高い頻度だった.
4) 脳内血腫の有無については, 良好な経過を示した群では, 3.6%, 脳血管攣縮の発生した群では7.1%, 早期死亡群では46.1%と有意の差がみられた.
5) 急性水頭症の有無については, 良好な経過を示した群7.1%, 脳血管攣縮の発生した群28.6%, 早期死亡群では53.5%であった.
6) 以上より, 両側シルビウス裂溝ならびに前大脳縦裂が, くも膜下凝血に満たされるか, くも膜下腔の消失が, くも膜下出血早期CT像の特徴であるが, 脳底槽, 迂回槽, 四丘体槽までも, くも膜下凝血が満たす時, 早期死亡あるいは脳血管攣縮の発生という経過たどる可能性が強く, 脳室内出血, 脳内血腫を伴う場合, 早期死亡する可能性が極めて高く, 一方, 発症早期から脳槽のlow demityがよく保たれているものは, 予後が良好であることが判明した.
本論文の要旨は, 第5回日本脳卒中学会総会にて発表した.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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