抄録
脳動脈瘤破裂後の脳血管攣縮患者9人に対して臨床症状出現時, dopamine (6例), angiotensinII (3例) を用いて昇圧を行ない, その時の脳血流量 (CBF), 心機能の変化を調べた.CBFはアルゴン法を用い, 昇圧による変化は酸素動静脈含量較差より求めた.また1例では, Xe-CT-CBFstudyを行なった.dopamine, angiotensin II使用群とも昇圧と共にCBFの増加が認められた.また, Xe-CT-CBFでも攣縮発生部に一致して昇圧に伴うCBFの増加を認めた.これらのことより昇圧によるCBFの増加の原因として, 攣縮部の脳循環自働調節能の破綻が示唆された.心機能の面からは, dopamine投与群では投与量に比例して心拍出量が増加したのに対し, angiotensin II投与群では投与量とともに心拍出量が減少し, 全身血管抵抗が増加した.このことよりangiotensin IIの使用は, 特に心疾患を有する患者に対して慎重でなければならない.