脳梗塞を多発性脳梗塞, 脳主幹動脈閉塞症, 穿通枝梗塞の3群に分け, 赤血球変形能 (deformability index以下DI) および全血粘度を検討した.多発性脳梗塞18例のDIは平均値0.687±0.150ml/minと対照群38例の0.896±0.168ml/minに比し有意に低値であった. (p<0.01) とくに多発梗塞性痴呆3例のDI平均値は0.514±0.160ml/minと低下が著明であった.穿通枝梗塞31例の平均DI値は0.776±0.180ml/minで対照群に対し有意に低値 (p<0.01) を示したが, 多発性脳梗塞群に比して有意に高値であった (p<0.05).また, 脳主幹動脈閉塞症のDIは対照群との間に有意差を認めなかった.さらに各群を急性期, 慢性期に分類してDIを検討したが, 両者に有意差を認めなかった.粘度-ヘマトクリット回帰直線による全血粘度の検討では多発性脳梗塞群の回帰直線は急性期脳梗塞にほぼ近似し, 高粘度を呈した.以上, 脳梗塞におけるDIを検討した成績からDIは全血粘度とともに脳梗塞, 特に多発性脳梗塞の発症に関与していることが推定された.