脳卒中
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高血圧性大脳半球出血の大血腫形成機序に関する研究
稲田 良宜
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1986 年 8 巻 4 号 p. 281-293

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抄録

高血圧性脳出血の大血腫形成機序について検討した.
1) 対象として, 脳出血で搬入された患者のうち脳血管撮影で造影剤の血管外漏出像を示した31症例を検討した.そのうちの24例 (77.4%) は発症から6時間後には脳ヘルニア徴候を伴った半昏睡以上の状態に陥っていた.
2) 脳血管撮影では, 31例中の27例 (87.1%) が動脈相について漏出像をみとめた.そのうち21例 (67.7%) が多発性の漏出像であった.また, 14例 (45.2%) は複数の動脈から漏出していた.
3) Windowの幅を変えたCTscanでは, 大血腫は多数の小血腫が集まってできていることが示唆された.
4) CT scanでの血腫の広がりと, 脳血管撮影での出血血管と多発性漏出像の現れ方を対比検討した.その結果は, これまで血腫が単一出血源から機械的な圧排力によつて進展するとされていたその方向に沿つて, 複数の動脈または多数の動脈枝から連鎖的・多発性に破綻出血して血腫が増大したものと考えられた.
以上より, 高血圧性劇症型脳出血に関しては, 治療の立場からすれば, 超急性期における血腫増大の内科的防止策が手術以前に考慮されるべきと考えられる.

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© 一般社団法人 日本脳卒中学会
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