ウイルス
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総説
RNAウイルスと変異
佐藤 裕徳横山 勝
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2005 年 55 巻 2 号 p. 221-229

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抄録

 自然界で活発に増殖するRNAウイルスは,突然変異により絶え間なくゲノム情報を変化させる.ゲノム情報の変化は,しばしばウイルスの免疫感受性,薬剤感受性,細胞指向性,宿主域の変化につながり,予防治療効果の低下や新興再興感染症の原因となる.この“moving targets”に対処するには,ウイルスのゲノムと蛋白質の変化に関する情報が欠かせない.現在,自然界のウイルスゲノムの変異情報は急速に蓄積されつつある.一方,変異に伴う蛋白質の構造と機能の変化を実験的に検証するには未だに時間がかかる.本稿では,最も高速で変化する病原体の一つで,治療薬や免疫からの逃避能力に優れるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を中心に,RNAウイルスの変異研究の成果を整理する.また,近い将来,生命現象の記述や創薬に重要な役割を果たすと期待されている計算科学的手法をとりあげ,ウイルスの変異解析と創薬の支援に適用した研究を紹介する.

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© 2005 日本ウイルス学会
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