ウイルス
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特集1:パピローマウイルス
皮膚分化とヒトパピローマウイルス
佐塚 文乃酒井 博幸
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2008 年 58 巻 2 号 p. 165-172

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抄録
 パピローマウイルスは上皮組織に感染し腫瘍を形成する病原ウイルスであり,動物モデルを用いて「ウイルス発がん」を再現した最初のウイルスである.ヒトを宿主とするHPVに関してはzur Hausenによって子宮頚癌発症との関連が示されて以来,多くの上皮系悪性腫瘍に関与していることが示されている.このような病原性を持つHPVは性交渉感染症として広く蔓延しており,近年では子宮頚癌発症時期の若年齢化が問題となっている.これまでのHPV研究は主にその発癌との関連に注目して進められており,その成果はp53やpRbなどの機能,ユビキチン-プロテアソーム経路の解明に大きく寄与してきた.それに対してHPVのウイルスとしての性状は,その臨床的な重要性にも関わらず,パピローマウイルスの発見から80年近くたった現在もほとんど解明されていない.このようなHPV研究の進展に対する障りは,ウイルスの生活環が感染標的である上皮系細胞の分化プログラムと密接に結びついているという特徴が故である.この特徴のため通常の単層培養条件下ではHPVの複製を観察することができず,得られる知見も限られてくる.そこで,問題解決にあたり現在様々な手法を用いたHPVの生活環や遺伝子機能の解析が行われている.ここではHPVの遺伝子機能や,その発現調節メカニズム,さらにウイルスの複製様式について概説できたらと思う.
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© 2008 日本ウイルス学会
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