2011 年 61 巻 2 号 p. 221-238
フラビウイルス科フラビウイルス属は,日本脳炎ウイルス,デングウイルス,ウエストナイルウイルスなど,全世界で公衆衛生学的問題となる感染症を起こす病原体を多く含む.これらウイルスはヒト以外の哺乳動物や鳥類が保有宿主・増幅動物となり,蚊またはダニにより媒介されるため,完全に自然界から排除することは不可能である.近年,ウイルスの宿主細胞内での複製機構や構造,免疫回避機構などが急速に解明されて来たため,これまでにない新しい抗ウイルス薬やワクチンの開発が可能となっている.本総説では,最新の知見を踏まえて,フラビウイルスの複製機構・免疫回避機構を解説するとともに,ワクチン・抗ウイルス薬開発の現状について紹介する.