ウイルス
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特集:第61回日本ウイルス学会学術集会シンポジウム1「発癌ウイルス」
EBウイルスによる発癌の分子機構
岩切 大
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2014 年 64 巻 1 号 p. 49-56

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抄録

 EBウイルス(EBV)は広くヒトに感染している2本鎖DNAウイルスで,バーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫,上咽頭癌,胃癌など種々の悪性腫瘍との関連が知られている.EBV関連癌と呼ばれるこれらの癌においてEBVは潜伏感染を維持し,発現しているウイルス遺伝子の機能は発癌に寄与すると考えられている.本稿では,発癌に関わるとされるEBV潜伏感染遺伝子のうち,特に膜蛋白質LMP2A (latent membrane protein 2A),及びnon-coding RNAであるEBER(EBV-encoded small RNA)の関与を中心に,EBVによる発癌機構について概説する.LMP2Aは自身でB細胞抗原レセプターシグナルを模倣するなど宿主免疫シグナル分子との相互作用によりリンパ腫の発生に寄与する一方,上皮においてもLMP2Aによる細胞内シグナル伝達の惹起が発癌に寄与することが明らかになっている.一方EBERは部分的2本鎖RNA(dsRNA)構造を持つと考えられ,宿主のdsRNA認識分子であるRIG-IおよびTLR3からのシグナル伝達を惹起するが,これらの自然免疫シグナルの活性化は,癌も含めたEBVによる疾患の病態形成に寄与することが明らかにされている.

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© 2014 日本ウイルス学会
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