抄録
ロタウイルスは,冬季乳幼児嘔吐下痢症の病因ウイルスである.ロタウイルス胃腸炎により,開発途上国を中心に毎年約45万人の乳幼児が死亡している.感染性はきわめて高く,先進国においても,ほぼすべての乳幼児が5歳までに感染し,発症する.1973年にヒトロタウイルスが発見されて以来,ウイルスの粒子構造,遺伝子構造,抗原構造,各ウイルス蛋白質の構造と機能,複製,病態,疫学,進化などが明らかになってきた.また,近年のリバースジェネティクス系の開発,応用により,ロタウイルス研究は新たな展開をみせている.本稿では,ロタウイルス研究に関して最新の知見を交えて紹介したい.