ウイルス
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特集:エボラ出血熱
エボラウイルス病の国内対策:BSL-4施設の必要性
西條 政幸森田 公一
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2015 年 65 巻 1 号 p. 89-94

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抄録

 日本ではエボラウイルス等バイオセーフティレベル4(BSL-4)に分類される病原体を取り扱うことはできない.1981年に国立感染症研究所は世界に先駆けてグローブボックス型のBSL-4施設を建設したが,30年以上が経過している現時点においてBSL-4施設として稼働されていない.2014-15年にかけて西アフリカにおいて過去にない大きな規模のエボラウイルス病(EVD)が流行している.また,致死率の極めて高い新興ウイルス感染症が世界各地で発生している.このような致死率の高い感染症対策に貢献するための研究がなされている中で,日本においては稼働しているBSL-4施設がないことから,感染性のあるBSL-4病原体を取り扱うことができず,公衆衛生対応や研究領域において十分な力を発揮できていない.多くの高病原性ウイルス感染症の病原体は動物由来ウイルスであり,地球上から根絶させることはできず,これからも流行が続くことが予想される.日本においてもBSL-4施設を用いて,BSL-4病原体による感染症対策のための研究や検査が実施できる体制を整備する必要がある.

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© 2015 日本ウイルス学会
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