ウイルス
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総説
抗ウイルス宿主膜貫通タンパク質MARCH8の同定
徳永 研三
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2015 年 65 巻 2 号 p. 173-178

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抄録

 MARCH8は,最近発見されたRINGフィンガー型E3ユビキチンリガーゼのMARCHファミリーに属する11メンバーのうちの1つである.MARCH8は種々の宿主膜貫通タンパク質の発現を低下させるが,その生理的役割は不明である.今回筆者らはMARCH8を新規抗ウイルス因子として同定した.ウイルス産生細胞におけるMARCH8の過剰発現は,レンチウイルスの産生レベルには影響しなかったが,ウイルスの感染性を著しく低下させた.MARCH8はHIV-1エンベロープ糖タンパク質のウイルス粒子への取り込みを,相互作用を介して細胞膜から発現低下させることによって阻害し,結果としてウイルスエントリー効率の大幅な低下を生じさせた.水胞性口炎ウイルスGタンパク質へのMARCH8の阻害効果はさらに顕著であったことから,MARCH8によるエンベロープウイルスの感染阻害が広範囲に渡る可能性が示唆された.MARCH8の内因性発現は単球由来マクロファージおよび樹状細胞で高く,MARCH8を枯渇させたマクロファージから産生されたウイルス粒子の感染性を有意に増加させた.今回の筆者らの知見は,MARCH8が最終分化型のミエロイド系細胞に高発現しており,それがウイルスエンベロープ糖タンパク質のウイルス粒子への取り込みを低下させる強力な抗ウイルス宿主膜貫通タンパク質であることを示すものである.

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© 2015 日本ウイルス学会
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