抄録
RNAウイルスのゲノムには限られた数のウイルス蛋白質のみがコードされているため,RNAウイルスは増殖過程の多くを宿主細胞の機能に依存している.RNAウイルスの増殖に寄与する宿主蛋白質を解明することは,基礎的なウイルス学研究のみならず,抗ウイルス薬の開発などの応用的研究にも貢献し得る.
筆者らは,マイナス鎖RNAウイルスであるエボラウイルスの膜蛋白質VP40の細胞質内輸送に宿主のCOPII輸送が関与すること,プラス鎖RNAウイルスのエンテロウイルスA71の感染受容体がSCARB2であること,分節型RNAウイルスであるインフルエンザウイルスのゲノムRNAの核内での輸送に宿主蛋白質CLUHが寄与することを明らかにした.本稿では,それらの知見について紹介したい.