ウイルス
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総説
ロタウイルスのリバースジェネティクス系
~感染性ヒトロタウイルスの人工合成~
河本 聡志 福田 佐織
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2019 年 69 巻 1 号 p. 1-12

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抄録
 ロタウイルスは,乳幼児嘔吐下痢症の病因ウイルスである.1990年にロタウイルスの全ゲノム塩基配列が初めて決定されて以来,ヒトロタウイルスの人工合成を最終目標とする遺伝子操作系(リバースジェネティクス系)の開発は,ロタウイルス研究者の長年の念願であった.2006年にようやく,ヘルパーウイルスを用いて11本のゲノム分節のうち1本がcDNAに由来する組換えロタウイルスを作製できるリバースジェネティクス系が初めて開発された.その後10年かかって2017年,ロタウイルスゲノムをコードする11本のT7プラスミドに加えて,細胞融合性蛋白質等を発現するヘルパープラスミド3本を合わせた計14本を細胞に導入することで,動物(サル)ロタウイルスにおける完全なリバースジェネティクス系が実現した.次いで,11本のウイルス遺伝子のうち,2種類の遺伝子(非構造蛋白質NSP2とNSP5)を他の9本の遺伝子の3倍量として細胞に導入することで,最少因子(ロタウイルスゲノムをコードするT7プラスミド)のみから,しかも高効率にロタウイルスを人工合成することを可能とするリバースジェネティクス系(11-plasmid system)が確立された.一方で,最も重要なヒトロタウイルスは増殖能がきわめて低く,依然としてリバースジェネティクス系の開発は困難であったが,今年(2019年),当研究室において,11-plasmid systemとロタウイルス患者下痢便中のウイルスを効率良く分離する技術(高濃度のトリプシン添加と回転培養)とを利用することで,世界初となる,感染性ヒトロタウイルスの人工合成を報告した.本稿では,ロタウイルス研究者の宿願であった,ヒトロタウイルスの人工合成に至るまでの背景,そして今後の展望を紹介したい.
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