ウイルス
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2020年度杉浦奨励賞論文
サル免疫不全ウイルス複製に対する中和抗体のin vivo防御機序の解析
山本 浩之
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2021 年 71 巻 1 号 p. 87-96

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抄録

 免疫不全ウイルス感染症 対し防御能を呈する適応免疫応答の性質を解明することは,ウイルス持続感染の成立機構の理解とヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染症克服の手法の作出に重要である.HIV-1及び病原性サル免疫不全ウイルス(SIV)感染においてはCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答がウイルス抑制に中心的な寄与を果たす一方で,中和抗体(NAb)応答は高度に障害されている.特にHIV・SIV感染早期におけるNAb応答の欠失状態は,発揮されるべき本来のNAb防御機序の解明を逆に求めるものであるとも捉えられ,その一つのアプローチとして受動免疫実験が挙げられる.筆者らは高病原性SIVであるSIVmac239株感染サルエイズモデルの解析を行い,感染急性期における単回のSIV特異的ポリクローナルNAbの受動免疫が,ウイルス特異的T細胞応答の質的な亢進を連鎖的に惹起することにより,持続的なSIV制御状態を作出できることを見出した.このSIV感染モデルにおけるNAbとT細胞の相乗的な抗ウイルスin vivo防御機構は,HIV・SIVの持続感染成立機構の一端を明らかにすると共に,HIV制御手法にも見地を与える基礎的知見であると考えられる.

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