8歳の雑種猫が,乳糜胸の原因精査および治療のために受診した。呼吸状態は比較的安定していたが,胸部X線検査では胸水貯留を認めた。心エコー図検査では,重度の左房拡張に加え,僧帽弁前尖および後尖の肥厚が観察され,拡張期に可動域が制限されていた。また,カラードプラ法では左室流入波形にエイリアシングを認め,連続波ドプラ法では融合EA波が2.2 m/秒と高速であった。心エコー図検査所見に基づいて僧帽弁部狭窄症と診断し,アテノロール,スピロノラクトン,フロセミドなどによる内科的治療を開始した。治療により心拍数の低下および胸水の一時的な減少が認められたが,その後,胸水の増加と心膜液の貯留が確認されたため,ピモベンダンを追加投与した。その結果,貯留液は消失し,うっ血性心不全症状を再発することなく良好な経過を得ることができた。なお,猫の僧帽弁狭窄症にピモベンダンを使用した報告はなく,今後も慎重な経過観察が必要である。