2007 年 16 巻 3 号 p. 567-570
症例は右総腸骨動脈瘤を伴わない右総腸骨動脈-左総腸骨静脈瘻,腹部大動脈瘤であると診断された57歳男性.左総腸骨静脈は最大径 5cmに嚢状拡張していたため,動静脈瘻の瘻孔閉鎖および腹部大動脈瘤切除,人工血管置換術を施行した.術中所見で瘻孔は右総腸骨動脈壁粥状硬化の潰瘍形成部に 3 カ所存在しており,瘻孔からの出血コントロールに難渋したため,術中自己血回収装置を使用しながら瘻孔部分を含んだ右総腸骨動脈全体を縫合閉鎖し,その後血行再建を行った.動脈瘤を伴わない腸骨動静脈瘻は椎間板ヘルニア手術後などの合併症としては報告があるが,本症例のように手術の既往もなく動脈瘤も認めない腸骨動静脈瘻はまれである.術式は血流遮断した上での瘻孔のみの単純縫合閉鎖が望ましいが,動脈壁の石灰化が高度な場合は,動脈全体を縫合閉鎖してから血行再建する必要があると考えられた.