抄録
線維筋性異形成(fibromuscular dysplasia; FMD)は腎動脈や頸動脈に好発する原因不明の動脈疾患で,内腔狭窄や動脈瘤を生じる.症例は55歳,男性.15歳より20本 / 日の喫煙歴を有し,手指,足趾の潰瘍,冷感を自覚した.経動脈的血管撮影にて両側後脛骨動脈・橈骨動脈の途絶像を認めたことからBuerger病と診断し,左胸部交感神経焼灼術,右腰部交感神経切除術を施行し,また右後脛骨動脈を生検した.病理では器質化した血栓や血栓性静脈炎の所見は得られず,中膜,外膜の肥厚を認めたことからFMDと診断した.塩野谷の診断基準でBuerger病と診断したが,病理所見にて末梢血管発生のFMDと診断した.本症例は病理学的にも確認された,まれな末梢血管発生のFMDである.術前にBuerger病と診断したことから考え,以前Buerger病と診断していたものの中にもFMDが混在している可能性がある.