抄録
症例は38歳, 男性. 嗄声を主訴に近医を受診した. 胸部CTにて遠位弓部大動脈瘤の切迫破裂と診断され紹介入院となった. 緊急手術中, 亀裂の入った大動脈内膜がフラップ状に存在し, 偽腔内に血栓を有する限局した大動脈解離と診断し, 部分体外循環下に胸部大動脈置換を行った. 術後経過は良好にて一旦退院となったが, 手術 3 カ月後の胸腹部CTでは肝, 腎, 膵などの多臓器に腫瘍性病変が認められた. 腎生検では非上皮性悪性腫瘍と診断され, 化学療法を施行したが手術半年後に多臓器不全で死亡した. 剖検では胸部大動脈原発の血管肉腫と診断され, 多臓器に転移巣が認められた.