2007 年 16 巻 4 号 p. 637-640
われわれは腸管虚血を合併したDeBakey IIIb型急性大動脈解離に対して緊急上腸間膜動脈バイパス術を施行した症例を経験したので報告する.症例は68歳女性.背部から腹部にかけての激痛出現し,3D-CTおよびMD-CTにて遠位弓部から右総腸骨動脈までのDeBakey IIIb型急性大動脈解離および上腸間膜動脈に解離所見を認めた.腸管血流障害を合併した急性大動脈解離と診断し,左総腸骨動脈から上腸間膜動脈への緊急バイパス術を施行.術後腹痛は消失し経過は良好であった.本症例のように腸管虚血が疑われる症例に対しての迅速な診断には3D-CTおよびMD-CTは有用であり,虚血責任血管へのバイパス手術は有効であると考える.