2007 年 16 巻 6 号 p. 767-771
今回われわれは,下肢虚血をきたした膝窩動脈瘤 3 例を経験したので報告する.症例 1 は75歳男性.左下肢動脈閉塞にて当院へ救急搬送.血行再建は困難と判断し下腿切断術を施行,その際に約 5cmの膝窩動脈瘤を認めた.症例 2 は75歳男性.左膝窩部腫瘤に対して血管エコーにて2.7cmの膝窩動脈瘤を認めるも手術拒否にて放置.その後間欠性跛行を主訴に来院.血管造影にて左膝窩動脈閉塞を認め,膝窩 – 脛骨動脈バイパスを施行した. 症例 3 は29歳男性.右膝窩腫瘤を自覚するも放置.半年後,右下肢虚血にて近医を受診しMRIにて右膝窩動脈瘤を認め当院来院.血管造影にて膝窩動脈瘤は血栓閉塞しており,膝窩 – 腓骨動脈バイパスを施行した.膝窩動脈瘤は末梢動脈瘤のなかでは頻度が高い.膝窩動脈瘤の血栓閉塞や瘤内血栓による塞栓により,重症下肢虚血に至り救肢できない場合もある.したがって壁在血栓を有する膝窩動脈瘤が指摘されれば,動脈瘤径が小さくても積極的に外科手術を考慮すべきである.