日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
腎回転異常を伴った腹部大動脈瘤の 1 例
井上 天宏蜂谷 貴
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2008 年 17 巻 3 号 p. 475-478

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抄録

腎回転異常を合併した腹部大動脈瘤の症例を経験したので報告する.症例は56歳男性,CT検査にて径58mmの腎動脈下腹部大動脈瘤を認め,右腎は腎門部が腹側を向く不完全型腎回転異常であった.右腎動脈は大動脈から正常に分枝する 1 本と,左総腸骨動脈から分枝する下極枝の 2 本存在し,下極枝は右腎の約半分を灌流していた.手術では,この下極枝に橈骨動脈圧ラインから選択的持続血液灌流を行いながら,Y字人工血管置換術および下極枝-人工血管右脚の直接吻合を施行した.なお,術中右腎静脈下極枝が存在,右総腸骨動脈の腹側を走行し,左総腸骨静脈に流入していることが判明した.術後は腎機能においても良好な結果を得た.術中,腎虚血時間が長くなる場合には,選択的持続血液灌流法は適切な腎保護法であると考えられた.また,腹部大動脈瘤手術において腎の形態・位置異常を合併した症例では腎動脈とともに腎静脈にも起始・走行異常を合併することがあるため,術中の損傷を防ぐために術前の詳細な画像評価が重要であると考えられた.

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