日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈瘤術後の腸管虚血症例に対するoctreotideの有効性
福田 篤志星野 祐二岡留 健一郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2009 年 18 巻 6 号 p. 603-607

詳細
抄録
【背景】従来,腹部大動脈瘤術後の腸管虚血発生時には,重症例に対しては,壊死腸管の切除,軽症例に対しては,絶食による腸管安静と抗生剤投与以外に有効な治療法はなかった.われわれは,軽度から中等度の腸管虚血症例に対し,octreotideを使用しているので,その有効性を報告する.【方法】2000年以降,腹部大動脈瘤または腸骨動脈瘤術後に,下痢や発熱をきたし,大腸内視鏡検査にて,粘膜まで(grade 1)または筋層まで(grade 2)の腸管虚血と診断した症例を対象とし,octreotide 50~100μgを 1 日 2 回皮下注射し,臨床症状と内視鏡所見で有効性を検討した.【結果】2000年から2007年に当院で腹部大動脈瘤または腸骨動脈瘤で手術をしたのは,187例(破裂42例,非破裂145例)で,このうち 7 例(破裂 4 例,非破裂 3 例)が腸管虚血と診断され,発症率は,破裂例で9.5%,非破裂例で2.1%であり,いずれもgrade 1 および 2 であった.Octreotideを使用すると,7 例中 6 例で24時間以内に発熱または下痢が軽快し,5 例では 2 日以内に下痢が消失した.内視鏡的にも,1 週間で潰瘍の縮小と周囲の粘膜再生が確認され,遠隔期にも腸管狭窄をきたした例はなかった.【結論】作用機序は不明であるが,非全層性の腸管虚血にはoctreotideが有効であると思われた.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top