抄録
急性下肢動脈閉塞症を治療する際に,緊急時ゆえカテーテル血栓除去のみで寛解が得られたい.しかし病態により一期的にバイパス術なども追加する必要に迷う場合もあり得る.その指針をマルチスライスCT(MDCT)検査に求めて治療方針の選択を試みてきた.このたび自験例中の 2 例を報告する.第 1 例では浅大腿動脈の塞栓症と診断し,カテーテル血栓除去術のみで改善可能と判断した.第 2 例では腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症とその部の血栓による膝窩動脈への塞栓閉塞と診断し,同時に両大腿動脈間バイパス術も必要と判断した.両例ともに,MDCTにより確定できた術式を施行し,全治となった.MDCTは低侵襲かつ短時間に施行でき,血管壁性状の評価やその他の多発病変を把握できる.急性動脈閉塞症の成因を鑑別し,至適な血流改善術を選択することにより,救肢率や予後のさらなる改善に貢献し得ると考えられた.