抄録
症例は66歳男性で,1995年に食道癌に対し食道全摘,胃管による再建,永久気管瘻造設術を受けていた.2007年に気管瘻からの食物残渣の喀出,および吐血を認め入院.同日深夜に大量吐血を認め緊急手術となった.手術は気管胃管瘻縫合閉鎖,出血性胃管潰瘍縫合止血を行った.手術中に腕頭動脈を損傷,フェルトプレジェットを使用し止血したが,9日後より再出血を認め再手術となった.再手術は大腿-腋窩動脈間にGore-Tex®グラフトを使用し非解剖学的バイパスをおき,腕頭動脈を起始部と分岐部で閉鎖止血した.術後頸部創の感染が遷延化し長期入院となっているが,グラフトの開存性も良好で,腕頭動脈の再出血は認めておらず,脳合併症も認めていない.食道癌術後の出血性合併症に非解剖学的バイパス術を行った症例の報告はみられず初めての試みと思われる.