日本血管外科学会雑誌
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症例
特発性孤立性上腸間膜動脈解離の2例
佐久間 啓永谷 公一小田 克彦長嶺 進
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 20 巻 4 号 p. 747-750

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抄録

特発性孤立性上腸間膜動脈解離は比較的まれな疾患である.本疾患では出血性ショックや腹膜炎の症状を呈した症例の多くは外科的に治療される.来院時に症状が消失していたり,CTにて偶然発見された無症候性のものでは保存的に経過観察が可能な症例もあるがその自然経過ははっきりしない.このような症例を中,長期にわたり観察した報告もまれであるため報告する.症例1:53歳男性.臍周囲痛にて発症.近医受診.腹部造影CTにて上腸間膜動脈血栓もしくは解離を疑われ当院消化器内科にて血管造影施行.上腸間膜動脈解離の診断となり当科紹介受診.来院時腸管虚血の症状は消失していたので降圧剤による血圧管理とアスピリンによる抗血小板療法にて経過観察した.発症後22カ月後解離腔消失.62カ月後の現在再発認めず.症例2:56歳男性.右精巣腫(seminoma)手術後の経過観察の腹部造影CTにてSMA解離を認め当科紹介受診.腹部症状なかったので降圧剤による血圧管理とアスピリンによる抗血小板療法にて経過観察.12カ月後解離腔消失.51カ月後の現在再発認めず.特発性孤立性上腸間膜動脈解離に対し来院時症状が消失もしくは無症候性の症例に降圧剤,抗血小板療法にて保存療法を行ったところ解離腔が自然に消失した2例を経験したので報告した.

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