日本血管外科学会雑誌
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症例報告
タバコ窩に発生した橈骨動脈瘤の1例
佐野 真規海野 直樹山本 尚人田中 宏樹鈴木 実西山 元啓
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2011 年 20 巻 5 号 p. 801-806

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抄録

橈骨動脈は手背タバコ窩では筋に覆われず,些細な外傷でも瘤化の原因となりうる.橈骨動脈末梢領域の側副血行路の発達は個体差が大きく,瘤切除後の血行再建術の適応には末梢血流の評価が重要である.症例は48歳男性.徐々に増大する左手背の拍動性腫瘤を主訴に当院を受診した.超音波検査とMRA検査からタバコ窩に発生した径13 mmの橈骨動脈瘤と診断し,瘤破裂のリスクを考慮し手術を施行した.術中,左拇指の経皮酸素分圧(TcpO2)を経時的にモニターし,動脈瘤中枢側の橈骨動脈を遮断後にTcpO2の低下を認め,血行再建術の適応と考えた.橈骨動脈と第1背側中手動脈の端々吻合を手術用顕微鏡下で施行した.血流再開後に同部位のTcpO2は改善した.病理検査結果は真性瘤であり,些細な外傷が原因で発症した可能性が考えられた.タバコ窩橈骨動脈瘤は本邦でこれまでに6例が報告されている.術中の血流評価にTcpO2測定は有用と考えられた.

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