日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈瘤破裂症例に対するOpen managementの有用性について
佐伯 悟三井田 英臣河合 奈津子
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 21 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

【目的】当科では2002年10月より腹部大動脈瘤破裂手術後の多臓器不全の原因となるabdominal compartment syndrome(ACS)を回避するため,重症例に対し積極的にOpen managementを行っている.症例の臨床経過を検討しOpen managementの有用性につき検討した.【方法】2002年10月~2011年1月までに手術を完遂した腹部大動脈瘤破裂連続20例について,通常に閉腹を行った10例(閉腹群)とOpen managementを行った10例(開放群)につき,術前術中因子,術後経過について検討した.Open managementの適応は,(1)閉腹時に明らかに術後腹腔内圧の上昇が予想される場合,(2)術後重篤な合併症が生じる危険性が高いと判断した場合とした.【結果】術前術中因子は(閉腹群):(開放群)で術前ショック例1/10 : 5/10,術前心停止例0/10 : 3/10,平均手術時間211分: 251分,平均出血量2433 g : 8228 g,と開放群でより重篤な症例が多かった.術後経過は(通常群):(開放群)で術後ショック遷延例0/10 : 4/10,重篤な臓器不全が生じた例2/10 : 7/10,死亡例0/10 : 2/10であった.死亡原因は手術中からのショック1例,広範な腸管壊死1例でともに1日以内に死亡した.生存例のなかで開放群に生じた重篤な合併症は,ショック3例,腎不全2例,腸管壊死1例,呼吸不全2例(重複あり)であったが,十分な輸液,呼吸管理のしやすさなど術後の回復にOpen managementが有用であったと思われた.【結論】重篤な腹部大動脈瘤破裂症例に対するOpen managementはACSを回避し救命率を上げるために有用であることが示唆された.

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