自験例は41歳男性.上腸間膜動脈(SMA)解離の診断にて転院搬送.造影CTにてSMA真腔閉塞認めず空腸動脈分枝の血流も保たれており,その他腸管虚血を疑う所見を認めなかったため,抗凝固・抗血小板療法は行わず厳重な血圧管理のみで良好な経過を得た.加えて2008年8月から2011年4月までに本邦で報告された保存的加療例のうち自験例を含め治療内容,転帰が明らかな33例を検討した.保存的加療中に真腔閉塞を来し血行再建を要した症例はなかった.また非抗凝固療法群では偽腔の再開通を認めなかったのに対し,抗凝固療法群では初診時偽腔開存例のうち5例で偽腔閉鎖を得られず,初診時偽腔閉塞例のうち2例で偽腔再開通を認めた.抗血小板療法のみ施行された群では偽腔の再開通を認めなかった.特発性孤立性SMA解離に対して造影CTにて経時的に経過観察を行い,抗凝固・抗血小板療法を行わず保存的に軽快した症例を経験したため文献的考察を加え報告する.