日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
高齢者(80歳以上)胸部大動脈疾患に対するステントグラフト内挿術早期成績の検討
前田 俊之栗本 義彦伊藤 寿朗小柳 哲也柳清 祐洋田淵 正樹仲澤 順二村木 里誌川原田 修義樋上 哲哉
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キーワード: 胸部大動脈瘤, TEVAR, 高齢者
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2012 年 21 巻 2 号 p. 107-111

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抄録
【目的】胸部大動脈疾患に対する血管内ステントグラフト内挿術(TEVAR)は低侵襲治療として各施設で行われている.当院の治療方針は,胸部下行大動脈病変に関してはTEVARが第1選択である.しかし,弓部分枝を巻き込む病変に対してはopen surgeryが第1選択で,遠位弓部大動脈病変に対するTEVARは80歳以上の高齢者を含むhigh risk症例に限って解剖学的な適応を満たせば選択している.今回,当院における高齢者に対するTEVAR早期治療成績を検討した.【方法】2007年1月から2010年6月までに当院にて施行したTEVAR施行症例119例を対象とし,80歳以上の高齢者群(H群)38例と80歳未満の対照群(C群)81例の2群間における術前,術中,術後因子に対し比較検討を行った.【結果】平均年齢はH群82.4±2.5歳,C群69.7±9.3歳であり,男性はH群28例(73.6%),C群67例(82.7%)であった.術前因子は糖尿病,高血圧症,高脂血症,閉塞性肺疾患,慢性腎不全,冠動脈疾患に有意差を認めなかったが,担癌症例はH群に多かった(p<0.001).術中因子は使用デバイス,アプローチ部位に有意差を認めなかった.手術時間,麻酔時間はH群でそれぞれ151.9±69.4分,243.2±77.4分であり,C群で159.9±109.7分,243.2±113.1分であった.H群に在院死亡は認めなかったが,C群では5例(6.2%)に認めた.術後因子においても主要合併症,術後在院日数,退院形式に有意差を認めなかった.【結論】TEVARは高齢者においても安全で有効な治療手段と考えられた.
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