日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
人工血管J Graft SHIELD NEO®を用いた弓部大動脈全置換術の検討
橋本 誠井上 聡巳奈良岡 秀一樋上 哲哉
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2012 年 21 巻 6 号 p. 703-707

詳細
抄録

要  旨:【目的】当院で,胸部大動脈瘤(解離性大動脈瘤を含む)に対して,人工血管J Graft SHIELD NEO®を用いて弓部大動脈全置換術を施行した症例と,同手術を人工血管Gelweave®を用いて施行した症例との臨床経過を比較検討する.【方法】2008年1月より2010年12月までの期間,当院にて同一術者が施行した再手術例を除く弓部大動脈全置換術連続25症例(SHIELD NEO®群10例,Gelweave®群15例)を対象とした.両群間で,手術時間,止血時間,輸血量,術後ドレーン排液量,ドレーン全抜去までの日数,術後CRP値の推移,術後WBC値の推移,術後熱型,在院日数等の項目に関して統計学的に比較検討した.【結果】両群間で術前状態,合併手術に関しての有意差は認めなかった.両群間で病院死認めず,主な術後合併症でも有意な差は認めなかった.手術時間,止血時間,在院日数などでは両群間に差を認めなかったが,SHIELD NEO®群では心嚢ドレーン排液量が有意に多く(p<0.01),術後7日目のCRP値が高い傾向にあった(p<0.01).【結論】人工血管SHIELD NEO®とGelweave®を用いた弓部大動脈全置換術の際の臨床所見を比較検討した.SHIELD NEO®群で術後心嚢ドレーンの排液量が多く,炎症反応が遷延する傾向にあったが,術後合併症や入院期間に関しての差は両群間で認めなかった.今後症例を積み重ねることで今回の結果の臨床的意義を検討する必要がある.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top