日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
急性A型解離に対する新しい治療戦略:術後長期予後改善を目指したOpen stent graft変法
朝倉 利久岡田 至弘池田 昌弘高橋 研森田 耕三田畑 美弥子小池 裕之上部 一彦井口 篤志新浪 博
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2012 年 21 巻 6 号 p. 709-715

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抄録
要  旨:急性A型解離(AAD)の術後長期予後改善を目的として,部分弓部置換術(HAR)に簡便かつ安全に下行大動脈(DA)にステントグラフト(SG)を内挿する術式(Open stent graft変法:OS変法)を考案し,その有効性について検討した.対象は,当院開設の2007年4月~2011年3月にAADでHARを施行した連続76例で,単独HAR施行症例をC群(16例),HAR+OS変法施行症例をS群(60例)とした.SGの挿入は循環停止下に編み込み法で行った.患者背景,手術時間,大動脈遮断時間,下半身虚血時間に有意差を認めなかった.手術死亡はC群2例,S群1例であった.SGによる対麻痺やmalperfusionは認めなかった.術後早期の造影CTをC群14例(88%),S群53例(88%)に施行した.DAの偽腔閉塞例はC群6例(43%),S群31例(58%)であった.真腔優位例はC群7例(50%),S群44例(83%)であり,S群で有意に高かった.術後中期のCTをC群12例(86%),S群30例(51%)に施行した.DAの偽腔が縮小または消失した割合はC群3例(25%),S群15例(50%)であった.DA径が拡大した割合はC群6例(50%),S群4例(13%)でS群で有意に少なく,C群の1例は再手術を要した.OS変法は,SG挿入に要する時間は3分以内であり,術中術後の合併症なく安全に施行可能であった.術後中期におけるDAの偽腔の縮小または閉塞率はC群に比較しS群で高率であったことから,本術式は遠隔期の偽腔拡大による再手術や破裂の危険性を減少させる可能性が示唆された.
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