日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
縫工筋弁法により人工血管を温存できた鼠径部人工血管感染の1例
福永 亮大郡谷 篤史隈 宗晴岡崎 仁
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2012 年 21 巻 7 号 p. 795-798

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抄録
要  旨:人工血管感染は重篤な合併症であり,人工血管抜去が治療の基本である.しかし,一定の条件下では,人工血管を温存する方法が試みられ,種々の筋弁法を用いた報告も散見される.今回,鼠径部人工血管感染に対し,縫工筋弁法を用いて人工血管を温存し得た症例を経験したので報告する.症例は,83歳男性,下肢閉塞性動脈硬化症に対し,大腿-膝窩動脈バイパス術(閉塞),大腿-大腿動脈交叉バイパス術を施行後,鼠径部創からの排膿を認めた.人工血管は皮膚外に露出していた.創部培養では,MRSEが検出された.適切な抗菌薬使用とデブリードメント・洗浄を行い,創部培養は陰性化した.その後に,人工血管を被覆するように縫工筋弁を行い,治癒した.筋弁法による感染人工血管温存術は,局所血流増加による殺菌効果,死腔をなくす効果などがあり,有効な方法と考えられた.なかでも,縫工筋弁は手技的に容易であり,有用であった.
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