2012 年 21 巻 7 号 p. 833-837
要 旨:慢性透析患者の末梢動脈疾患(以下PAD)に対しては非解剖学的な血行再建が必要になる場合がある.しかし術後の血行障害にて対側に新たな鎖骨下動脈-両大腿動脈バイパスを施行した場合,人工血管が感染すると,救命救肢のため別ルートでの血行再建および感染グラフトの摘出,広範囲な創の感染コントロールが必要となるが極めて困難である.今回われわれは再鎖骨下動脈-両大腿動脈バイパス術後の人工血管感染に対し上行大動脈-両大腿動脈バイパス術およびVacuum-Assisted Closure Therapy(以下VAC療法)の併用により治癒した症例を経験した.症例は79歳男性,左鎖骨下動脈-両大腿動脈バイパス術後の血栓閉塞により2010年11月右鎖骨下動脈-両大腿動脈バイパス術を施行した.2011年1月に人工血管感染を発症したため,同年2月に上行大動脈-両大腿動脈バイパス術および感染人工血管の全摘除術を施行し,広範囲の感染創に対してVAC療法を併用した.VAC療法および抗生剤投与により術後67日目感染創の完全な治癒を得た.