日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
感染により破裂をきたした自家動静脈内シャント6例の検討
横川 雅康辻本 優
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 22 巻 1 号 p. 13-16

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抄録
要  旨:【目的】自家動静脈を用いたarteriovenous fistula(AVF)の感染は比較的稀な合併症である.通常抗生剤治療によく反応するが,破裂や出血をきたした場合は緊急手術を必要とする,これまでにAVF感染から破裂をきたした症例を6例経験したので報告する.【対象と方法】全例女性で,平均年齢は70.5歳であった.5例が開放性出血であり,他の1例は感染性仮性動脈瘤を形成していた.【結果】AVF造設から感染・破裂までの期間は,平均25.0カ月であり,2例は造設後2カ月以内の早期発症であった.全例緊急手術を行い,開放出血の症例ではターニケットで出血をコントロールしつつ手術室に搬送した.流出静脈やシャント静脈に破裂をきたした4例では感染部位の切除とシャント閉鎖を行った.うち2例は一期的に手術創を閉鎖したが,他の2例は開放創とした.吻合部周辺から出血した2例中1例でAVFの温存を試みたが,最終的にシャント閉鎖が必要であった.他の1例ではシャント閉鎖とさらに橈骨動脈の結紮を余儀なくされた.動脈の結紮を必要としたのはこの症例のみであった.5例でMRSAが検出された.6例中4例は救命可能であったが,一期的創閉鎖を行った2例のうち1例が敗血症のため死亡した.また1例が術後透析困難となり死亡した.【結論】AVF感染ではS. aureusが起炎菌となることが多かった.治療に際しては,出血のコントロールが重要であり,一期的閉鎖は敗血症に進展する危険があることから,原則として創の開放が必要であると考えられた.適切な抗生剤の選択や手術術式を含め迅速な治療計画を立てることが重要であると考えられた.
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