2013 年 22 巻 4 号 p. 741-745
要 旨:胸腹部大動脈瘤に対する腹部分枝バイパスおよびステントグラフト内挿術(debranching + TEVAR)後のperigraft seromaは,対処が困難であると予想される反面,解剖学的に周囲臓器への影響が出やすく,経過観察ができない可能性が高いと思われる.このような病態に対し,血管内治療を行った症例を報告する.74歳,女性.他院での弓部・下行大動脈置換後の末梢吻合部仮性瘤と,胸腹部大動脈瘤に対し,debranching + TEVARを施行.PTFE graftの周囲にseromaを形成し,イレウスをきたしたため,大伏在静脈にExpress stentを内挿して作成したcovered stentを,PTFE graftに裏打ちするように留置し,seromaは縮小した.Perigraft seromaに対するcovered stentを用いた血管内治療は,有用な選択肢の1つと思われた.