2013 年 22 巻 7 号 p. 980-983
要旨:上腕骨骨折に腋窩動脈の損傷を伴うことは少ない.今回われわれは上腕骨近位端骨折の後,腋窩動脈仮性動脈瘤を発症した1 例を経験したので報告する.症例は83 歳,女性.2010 年4 月上旬転倒し,右肩を受傷した.上腕部X 線写真にて右上腕骨近位端骨折を認め,第3 病日に観血的整復術が施行された.受診時に明らかな神経障害や血行障害は認めなかった.第5 病日より右腕神経叢不全麻痺が出現し,その後,右腋窩周囲の腫脹が出現し徐々に増強した.第35 病日に橈骨動脈拍動消失が確認され,造影CT および血管造影の結果,右腋窩動脈仮性動脈瘤の診断となり,仮性動脈瘤開口部縫合閉鎖術を行った.術後経過は良好であったが,神経障害は残存した.受傷時に血行障害を認めない上腕骨近位端骨折においても,持続する腫脹・疼痛や,神経障害がある場合は,腋窩動脈損傷の可能性に留意し,経時的に確認することが重要である.